あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう/岡村 靖幸
No.3
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分類:曲 詞:岡村 靖幸 曲:岡村 靖幸 収録:「家庭教師」(ESCB-1102 \2,800)
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天才。岡村ちゃんのことを一言で言うならば、私はこう言う。 なんていうんですかね、もう。歌うために、曲を作るために産まれてきたんじゃないかと思うくらいで。 先日見た雑誌に「J-POP界の至宝」と紹介されていて、笑ったのですが、今となっては至宝というよりは秘宝なんじゃないかと思うわけですよ、ええ。
今、音楽業界はプチ岡村ちゃん祭りです。フェスティバルです。カーニバルです。 ラジオでは選曲者の趣味により曲がオンエアされ、雑誌のライターさんが今夏の野外フェスについて語るときには名前があがり、復活ライブのチケットが取れなかったと言っては嘆いております。 そうなんです!ライブ! いよいよ明日、7年振りのソロライブが行われるのです!これが浮かれずにいられるであろうか?いや、ない!みたいな。当然、私もチケット争奪戦を乗り越え、参戦いたします。うっひょっひょっひょっひょっひょっひょ!!!
・・・取り乱してしまった。いかんいかん。 で、明日に備えてレビューを一つ書いてみようかと思い至ったのだが。何しろ好きな曲は沢山沢山あるわけで。選びきれずに、ふと思いついた曲を挙げてみることに。
「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」 これはシングル(廃盤)にもなったわけだが。発売当時、余りにも長いタイトルということで評判になった。そりゃそうだ。てゆーか歌詞ある部分そのままじゃん。 とかいうツッコミも入りつつ。この曲には、岡村ちゃんのいいところがぎゅーっと濃縮されているのですよ。ま、そんな曲は他にもあるけど。 まずアレンジ。イントロがない。いきなり岡村ちゃんが歌いだすという刺激的な出だしで、おやおや唐突になんですかー、と思って歌詞を聞いてみると、これがバスケの試合の真っ最中のシーンなんですわ。こんなところがやっぱり岡村ちゃんはうまいなあ。他にもブラスバンドを効果的に使っていたりして、あー青春!青春の音!な作りになっている。 そしてメロディー。タイトル部分の入っているAメロはなめらかな感じ。歌っていて気持ちいいんだこれが。岡村ちゃんの伸びのいい声が堪能できる。そしてちょっとドキドキ感のあるBメロ。どうなの?この先どうなっちゃうの?みたいな緊迫感。そしてそこから一転。爽やかなサビを迎えるのであります!ドラマです!ドラマなのです! 最後に歌詞。これが一番重要かも。岡村ちゃんの曲は歌詞もすっばらしい。
あともう15秒で このままじゃ35連敗 ぼくの胸のドラムが ヘビメタを熱演している 汗で滑るバッシュー まるで謡うイルカみたいだ あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう?
まず35連敗という語感もいいし、それだけ負けているチームだということがこのドラマでは重要。だからこそ自分がシュート、それもロングで決めたら「あの娘」は一体どんな顔をするんだろう?と想像するわけ。想像。これポイント。35連敗もするくらいだから、今までにそんなシュートを決めて、観客がどんな顔をするのか見たこともないわけなのだよワトソン君。当然「あの娘」がどんな反応を見せるのか、見当もつかないのだよワトソン君(しつこい)。 さらに「胸のドラム」が「ヘビメタを熱演」とはどういうことですか先生!すごい表現だな。でも雰囲気わかるでしょう?でしょう?バッシューが体育館の床とこすれてキュッキュッと鳴る音。それを「謡うイルカみたい」だなんて・・・嗚呼なんてビューティフルポエマーなんだ岡村ちゃん・・・。
終盤、もっとも盛り上がる部分の歌詞は、捉え方が二つあって、ここはファンの間でも意見の分かれるところ。
寂しくて悲しくて つらいことばかりならば あきらめてかまわない 大事なことはそんなんじゃない
これをどうとるのか? ■「寂しくて悲しくて辛いこと」なんだったら、あきらめてもいいよ。大事なことっていうのは、そんな「我慢すること」じゃないでしょ?もっと素敵なことでしょ? ■「寂しくて悲しくて辛いこと」なんだったらあきらめちゃってもいいの?大事なことはそんな程度のことじゃないだろう? さあ、どっちだろう。私は断然前者。というより後者の解釈は思いもつかなかった。しかし言われてみれば、メロディーがどっちとも取れる切れ方なんだなこれがまた。うーん。でもやっぱり、「大事なこと」っていうのは、そんな、ツライことを我慢することそのもの、なんかじゃないと思う。もっと素敵な時を過ごすこと。生きることを楽しむこと。それが大事なこと。 歌詞の中のドラマで言えば、負け続けの弱小チームで、勝てもしないのに試合をしている。汗まみれで心臓バクバクで、もう相当キツイわけですよ。バスケがツライなら、やめちゃったっていいわけで。忍耐力をつけることだけが部活の目的じゃないわけで。 それでも「ぼく」はバスケをする。最後まで試合をあきらめない。なぜなら、バスケは「寂しくて悲しくてつらいことばかり」じゃないからだ。いいプレイができたときの快感。チームのみんなと心が通じたときの喜び。その一瞬の素晴らしさがあるからこそ、どんなに連敗しても、「ぼく」たちはバスケをしているんだ。 うーん、なんかとてもわかりにくいなあ。やめちゃったっていいんだけど、自分の意思でやっている。そこが重要なポイントなのだ。
そんなわけで十数年聴いてるけど、未だに初めて聴いたときの新鮮さを失わない岡村ちゃんの曲。 機会があったらぜひぜひ聴いてみてくだされ。
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2003/09/27
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