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十七歳の地図/尾崎 豊  No.2
分類:曲
詞:尾崎 豊
曲:尾崎 豊
収録:「十七歳の地図」(SRCL-1910 \2,718)

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私の思春期は、尾崎と共にあった。
あのころのどんなシーンを思い出しても、尾崎の歌が流れている。

中学に入ってすぐの頃、雑誌の1ページで見た尾崎の鋭い目が妙に印象に残ってた。「十七歳の地図」のシングル(当時はレコード)を購入。思えばそれが、初めて買った「ロック」のレコードだった。

そこからは一気にはまりまくり、アルバムを買い、毎日毎日毎日聴いていた。冬には初のホールツアーが地元にやってきたので、ファンクラブに入り、チケットを入手。まだ大きいホールを使えるほど知名度もなく、500人ほどの小さいホールだった。
あのライブの感動は、今でも忘れられない。魂を削り取るようにして歌う尾崎。子供みたいな笑顔で走り回る尾崎。最前列の人達にステージから引き摺り下ろされて、それでも歌っている尾崎。なにもかもがスゴかった。
曲が全て終わり、アンコールが二度も終了しても客の拍手とアンコールの声が鳴り止まず。客電も点いて、退場が始まっても多くの人が帰らない。
・・・とそこへ、ギターを持った尾崎が登場!
残っていた客は一斉にステージ前に押し寄せる。
そのとき、尾崎が何を歌ったのかまでは覚えていない。みんなで一緒に歌ったことは覚えているのだが。
でも、嬉しいのか切ないのか笑いたいのか泣きたいのかわからなくて、胸がギューっと苦しくなった、あの思いだけは忘れられない。今でも思い出すたび、胸の中でその部分が、赤く熱くなるような気がする。

実は「売れる曲を書け」と言われて書いた曲だったらしいが。今この曲を聴いてみても、メロディーも歌詞も少しも色あせていない。


人波の中をかきわけ 壁づたいに歩けば
すみからすみはいつくばり 強く生きなきゃと思うんだ


12〜13歳だった私の心に、尾崎の歌がガン、と入り込んできた。
よく「教祖」などと呼ばれてしまっていたが、私にとっては尾崎はそんな存在じゃなかった。自分達が持っている、なんだかわからないモヤモヤしたもの、それをメロディーと言葉にする力を持っている存在。「こうしろ」というんじゃなくて、「俺はこう思うけどお前らはどうだ?」と問い掛けてくる存在。導く者ではなく、共に悩み歩いていく仲間。
この部分をとってみても、「強く生きろ」なんて誰に向かって言っているわけじゃない。ただ、自分はそう思ったんだ、そのことを伝えたい、それだけだ。
それを聴いて、何を思うかは、聞き手次第。


ちっぽけな俺の心に 空っ風が吹いてくる
歩道橋の上 振り返り 焼けつくような夕陽が
今 心の地図の上で 起こる全ての出来事を照らすよ
Seventeen's Map


こういうところは尾崎の詞のうまいところだと思う。
聴いていると、映像が浮かんでくる。
渋谷の街。歩道橋の上に佇む尾崎、もしくは自分の姿。振り返るとビルの合間から見える大きな太陽が、自分を赤く染める。吹いてくる風まで感じられるような気にさえなる。

尾崎が亡くなってしまったときには、私は当時の彼の曲からはすっかり遠ざかってしまっていた。
今なおメモリアルものが新しく出てくるような伝説のミュージシャンになってしまったが、私の中では尾崎はカリスマなんかじゃない。遠くで、でも途中まで同じ方向を目指して歩いていた仲間。向かう方向も速度も、すっかり別れてしまい、更に尾崎の道は途切れてしまったけれど。
6歳上だったはずの尾崎の歳に追いつき、いつのまにかすっかり追い越してしまった。
あの頃思い描いていたような生き方はできていないし、願っていたような大人になれてはいない。
でも、今の自分もなかなか悪くはない。それでいいと、思う。
2003/09/22

No. PASS


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